category:萌え(SSS込み)
「委員会が見てる」、完結編の最終章・第1話。
多分2~3話で終わります。
今回はちょっと暗いです。しかも西脇出てこない…。
多分2~3話で終わります。
今回はちょっと暗いです。しかも西脇出てこない…。
西脇との兄弟関係を解消した。
そのことはすぐさま隊内の情報通たちの間で広まった。
しかし元々兄弟制度自体、知っているのは班長副班長と、あるいはそのどちらかと特殊な関係にある者。合わせても両手の指より若干多い程度に過ぎない。
そのため、表面上は何事もなく日は過ぎていった。
もちろん石川は橋爪を訪ねて来た。
だが、心配そうな眼差しを向ける石川に橋爪は大丈夫だと答えるしかなかった。
「元々、契約なんですよ」
「契約?」
石川の柳眉が寄せられる。
それでも彼の澄んだ瞳の強さは変わらないのだなと妙なところに関心しつつ、橋爪は続けた。
「西脇さんが本当に弟にしたい人が現れるまでの繋ぎだったんです、私は」
「まさか…いや、そんな筈無いだろ」
そう真剣に答える石川に、橋爪は無言の微笑で肯定を返す。
「でもなんで」
「意見の不一致、というやつですね。はい珈琲、熱いですよ」
「ああどうも…じゃなくてさ」
はぐらかされるものかと石川は橋爪を見る。
答え如何によっては、親友である西脇をも容赦しないという気概をみなぎらせた石川はまるで猫のようだなと思った。
「強いて言うなら」
橋爪は苦笑を漏らした。
「ちょっとね、疲れてしまったんです。色々と考えるのを」
上手く笑えたような気がする。
それでも何故か、石川はそれ以上深く尋ねて来ようとはしなかったのだった。
一人になり、橋爪は深く考える。
───好きだけど側に居て苦しい、なんて。
西脇はあの時、驚いたような顔をしていた。
それでも橋爪が差し出したバッジを受け取り、言葉を一言も発することなく静かに医務室を立ち去った。
所詮代わりなのだと思ったら辛かった。
そう、橋爪は西脇とただの『兄弟』になりたかった訳じゃない。むしろ、なりたくなかった。
特別な関係なんて望むこともできなかったから。
片恋だった。
想像もしたことなかった。ただ見ているだけの恋で充分だった、筈だ。
若くして亡くなってしまった親友の彼もそうだった。嫌われなかった、側に居てくれることを許してくれた。
それだけで良かった───その時は。
もし彼が病を克服していたら。『その先』を考えることが出来ただろうか。分からない。
橋爪の手を取ることは───なかったと思う。紫茉は、「分からないわよ?」と言ってくれた。だが今となってはそれは分からないのだけれども。
もし想いを打ち返してくれたとしても。彼と口付けをして抱きしめあってその後、ということは想像しにくい。いや、出来ない。
橋爪はあれから巡回の数を減らした。
その間でも彼が避けてくれているのだろう、西脇と会うことはなかった。
偶然食堂で西脇と目が合っても、自然と躱された。
───ああもう私のことを嫌いになってしまったんだな。
そう思うと苦しかった。
けれどそう思わないと、やっていられない。
卑怯だと思う。自分から切っておきながらこんなことを思うなんて。
今はそれが切欠でもいい。そして少しずつ───きらいになってくれればいい。
私のことを嫌いになったんだ、と言い聞かせていけばいいのだ。
そうしたら私もそうするから。
勝手にずきんと痛む胸に、そう呪文のように言い聞かせるから。
だから、そうしたらきっともっと離れて行ける。
昔、「あなたが嫌いよ」と言っていた同級生の女子がいた。
橋爪自身は嫌われる原因が分からなかった。特別に仲が悪かったわけでもなく、喧嘩した記憶も無い。
どうしたのだろうと橋爪は考えた。自分の何が、彼女にそう思わせたのだろうと。
だがそれ以上、彼女との仲が改善されることはなかった。今でもその原因は分からない。
ただ、一度だけ他の女子と話しているのをちらりと小耳に挟んだことがある。
「あの人は嫌になるぐらいまっすぐで、ホント綺麗なんだもの。だからきらいよ」
何故なのか。それを紫茉に話すと複雑な顔をして微笑された。
「放っておきなさい」と諭されたけれども、橋爪は今でも、彼女のことを思い出すと切なくなる。
誰かのことを嫌いだと思うことは、それはその間相手のことを考えている。
それは即ち、捕らわれているに等しい。
その気持ちが今なら分かるかもしれない、と思った。
まず橋爪のことを見たくなくなって、気付いたら嫌いになっている。
そして時間が経ち、その『原因』を忘れるほど嫌いになれば、それですべてが終わる。
だがそれは、つらいことだと橋爪は知っていた。
今まで好きだったひとへの感情を曲げることは、ひどく容易でいて難しい。
きらい、きらいと囁くたびに胸の裡に溜まるこの、重さが。
目に見えず空気よりも軽く、体積などもないのに溜まってゆくこの感情はただ切ない。
親指の爪をずっと噛んでいたいような、痛みをもたらす。
「………」
───西脇も同じ思いをしているのだろうか。
だとしたら、出来ることなら、そんな『意識』を持たずに。
彼が心苦しく思わないように───願わくば。
私を早く嫌いになってくださいと、祈るように橋爪はそう願った。
**************************
曖昧なままならいっそ、ぶった斬ってくれと思う気持ちも分かりますね。
はあ、もっと上手に書きたい…。
次回は怒涛の展開です。
そのことはすぐさま隊内の情報通たちの間で広まった。
しかし元々兄弟制度自体、知っているのは班長副班長と、あるいはそのどちらかと特殊な関係にある者。合わせても両手の指より若干多い程度に過ぎない。
そのため、表面上は何事もなく日は過ぎていった。
もちろん石川は橋爪を訪ねて来た。
だが、心配そうな眼差しを向ける石川に橋爪は大丈夫だと答えるしかなかった。
「元々、契約なんですよ」
「契約?」
石川の柳眉が寄せられる。
それでも彼の澄んだ瞳の強さは変わらないのだなと妙なところに関心しつつ、橋爪は続けた。
「西脇さんが本当に弟にしたい人が現れるまでの繋ぎだったんです、私は」
「まさか…いや、そんな筈無いだろ」
そう真剣に答える石川に、橋爪は無言の微笑で肯定を返す。
「でもなんで」
「意見の不一致、というやつですね。はい珈琲、熱いですよ」
「ああどうも…じゃなくてさ」
はぐらかされるものかと石川は橋爪を見る。
答え如何によっては、親友である西脇をも容赦しないという気概をみなぎらせた石川はまるで猫のようだなと思った。
「強いて言うなら」
橋爪は苦笑を漏らした。
「ちょっとね、疲れてしまったんです。色々と考えるのを」
上手く笑えたような気がする。
それでも何故か、石川はそれ以上深く尋ねて来ようとはしなかったのだった。
一人になり、橋爪は深く考える。
───好きだけど側に居て苦しい、なんて。
西脇はあの時、驚いたような顔をしていた。
それでも橋爪が差し出したバッジを受け取り、言葉を一言も発することなく静かに医務室を立ち去った。
所詮代わりなのだと思ったら辛かった。
そう、橋爪は西脇とただの『兄弟』になりたかった訳じゃない。むしろ、なりたくなかった。
特別な関係なんて望むこともできなかったから。
片恋だった。
想像もしたことなかった。ただ見ているだけの恋で充分だった、筈だ。
若くして亡くなってしまった親友の彼もそうだった。嫌われなかった、側に居てくれることを許してくれた。
それだけで良かった───その時は。
もし彼が病を克服していたら。『その先』を考えることが出来ただろうか。分からない。
橋爪の手を取ることは───なかったと思う。紫茉は、「分からないわよ?」と言ってくれた。だが今となってはそれは分からないのだけれども。
もし想いを打ち返してくれたとしても。彼と口付けをして抱きしめあってその後、ということは想像しにくい。いや、出来ない。
橋爪はあれから巡回の数を減らした。
その間でも彼が避けてくれているのだろう、西脇と会うことはなかった。
偶然食堂で西脇と目が合っても、自然と躱された。
───ああもう私のことを嫌いになってしまったんだな。
そう思うと苦しかった。
けれどそう思わないと、やっていられない。
卑怯だと思う。自分から切っておきながらこんなことを思うなんて。
今はそれが切欠でもいい。そして少しずつ───きらいになってくれればいい。
私のことを嫌いになったんだ、と言い聞かせていけばいいのだ。
そうしたら私もそうするから。
勝手にずきんと痛む胸に、そう呪文のように言い聞かせるから。
だから、そうしたらきっともっと離れて行ける。
昔、「あなたが嫌いよ」と言っていた同級生の女子がいた。
橋爪自身は嫌われる原因が分からなかった。特別に仲が悪かったわけでもなく、喧嘩した記憶も無い。
どうしたのだろうと橋爪は考えた。自分の何が、彼女にそう思わせたのだろうと。
だがそれ以上、彼女との仲が改善されることはなかった。今でもその原因は分からない。
ただ、一度だけ他の女子と話しているのをちらりと小耳に挟んだことがある。
「あの人は嫌になるぐらいまっすぐで、ホント綺麗なんだもの。だからきらいよ」
何故なのか。それを紫茉に話すと複雑な顔をして微笑された。
「放っておきなさい」と諭されたけれども、橋爪は今でも、彼女のことを思い出すと切なくなる。
誰かのことを嫌いだと思うことは、それはその間相手のことを考えている。
それは即ち、捕らわれているに等しい。
その気持ちが今なら分かるかもしれない、と思った。
まず橋爪のことを見たくなくなって、気付いたら嫌いになっている。
そして時間が経ち、その『原因』を忘れるほど嫌いになれば、それですべてが終わる。
だがそれは、つらいことだと橋爪は知っていた。
今まで好きだったひとへの感情を曲げることは、ひどく容易でいて難しい。
きらい、きらいと囁くたびに胸の裡に溜まるこの、重さが。
目に見えず空気よりも軽く、体積などもないのに溜まってゆくこの感情はただ切ない。
親指の爪をずっと噛んでいたいような、痛みをもたらす。
「………」
───西脇も同じ思いをしているのだろうか。
だとしたら、出来ることなら、そんな『意識』を持たずに。
彼が心苦しく思わないように───願わくば。
私を早く嫌いになってくださいと、祈るように橋爪はそう願った。
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曖昧なままならいっそ、ぶった斬ってくれと思う気持ちも分かりますね。
はあ、もっと上手に書きたい…。
次回は怒涛の展開です。
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