category:萌え(SSS込み)
長くなりすぎたので分けました。
こっちが更に後編です。読まれるかたは下の方からどうぞ。
こっちが更に後編です。読まれるかたは下の方からどうぞ。
気が遠くなるかと思った。
その隙に、身動きすることも忘れた橋爪の片足を西脇は少しだけ浮かせた。上から見るとまるで西脇の膝にかかとが乗っているようになっているのだ。
また彼自身も、それを何の障害とすらも思っていないように見えた。
このひとちょっと変じゃ…?
いやいやいや、男なのにこんな格好してるって分かったら私の方が変態じゃないか!!
「まあ絵になるわねえ」
「本当」
狼狽する橋爪をよそに、従姉妹ふたりはそんな呑気なこと言っている。橋爪は従姉妹を本気で呪った。ばかやろうと心の中で罵声を飛ばすことも勿論、忘れなかった。
もう嫌だ。
もういやだー!
何でこんなことになったんだ!!
「………」
本気で涙が滲みそうになった。
だからといって逃げ出す訳にも行かない。
橋爪が内心叫んでいる間にも、西脇は手を動かしていた。
西脇の所作は流れるようでいて本当に卒なく、全く違和感がなかった。
見るからに上質な格好をした男が、膝をついて橋爪の足を手に取っている。そして靴を履かせている。
彼の視線は当然ながら橋爪のつま先に向いていて、椅子に座った橋爪からは西脇がまるで目を閉じているかのように見えた。
ひどく高級な靴屋の店員か、執事とはこんな感じなのかと橋爪は見当違いのことを思った。
だがそれとは決定的に違うのが、彼の端正な面だ。まっすぐな眉、シャープな顔のライン、きりりとした唇。
やっぱりハンサムだな、とぼんやりそんなことを考えた。
そうこうする内に、履かせ終わったらしい。橋爪の片足を未だ自身のスラックスの上に載せたままだと言うのに、それを全く意に介していないのか西脇は椅子に座ったままの橋爪を見上げてきた。
「出来ました」
「あ…りがとう、ございます」
気のせいか、頬の熱が上がった気がした。
そそくさと西脇の足から靴を降ろすと、西脇が笑んだ。それどころか立ち上がる橋爪にごく自然に手を貸してくれる。
その大きな手はひどく温かかった。
そのまま頬にも睫にも手指にも熱を滲ませているような感覚を、橋爪がどきどきと全身で感じていた時。
「じゃあ西脇さん、説明をお願いします」
紅音が彼を呼んだ。はい、と答えて西脇は振り返った。そのまま離れていくかと思いきや、彼は何故か橋爪をさりげなく従姉妹の傍に連れて行く。
そのままなし崩しに三人で西脇の話を聞くことになった。店内のソファに座ると、西脇から資料が配られた。
「今回のCMは、『女性は幾つになっても薔薇』を表現することがコンセプトとなります。ご用意いたしました資料によりますと、弊社のリサーチ結果では…」
西脇の声が夜の店内に静かに沈む。
…なんで私ここにいるんだろう。
それよりピン打ちとやらはどうなったんだと隣の紅音をちらりと見るも、何を誤解したのかにっこりと笑い返された。
違う違う!と橋爪が訴えたくなったのも無理はないだろう。
「女は何歳になっても薔薇、かぁ」
しかしちょうどその時、翠が資料を見ながらそう呟いた。すると姉も大きく頷く。
「ある意味、紫乃には当てはまらないわね」
「そうよね。だって紫乃はオト」
「わーーーーーーーっ!!!」
橋爪が立ち上がって大声を上げる。わたわたと手を動かして、爆弾発言を落とそうとした翠の両肩に掌を乗せると、「なあにうるさいわねぇ」と姉のく紅音が呆れたように言った。
「あ」
はたと気付いて三人と対面していた西脇を振り返ると彼は目を丸くしていた。
ソファの端に座っていた橋爪は、真ん中の紅音を通り越して反対側の翠に身を倒していたのだ。まるで西脇の眼前で女性二人に覆いかぶさっているようなかたちに、一気に羞恥がこみ上げる。
「すみません…お話の途中に」
しゅんと項垂れて自らの位置に戻ると、「いえ」と柔らかないらえが返った。怒ってはいないようだが、呆れているか笑っているのかもしれない。
そう思うと益々身の置き所がなくなった。
橋爪が自己嫌悪に似た思いに囚われている中でも西脇の説明は続いた。凛とした声に整然とした話の内容は、聞く者を引き込む力を持っていた。
それは従姉妹たちも例外ではなかったらしい。どうする?とお互いを窺いあっているのが分かる。
それでも決定には至らず、説明がちょうと終わりかけたその時だった。
店の扉が開いた。
「こんばんは、こちらに西脇という者がお邪魔していると…」
新たな声がした。
橋爪が顔を上げると、ひとりの女性が店の中に入ってこようとしていた。彼女の名前を呼んだ西脇と、新たな客を迎える従姉妹たちに橋爪もつられて立ち上がる。
「突然申し訳ありません、私は───」
名刺を出した彼女は西脇や従姉よりも少し年上に見えた。
しかし西脇の紹介で、その彼女こそが今回のクライアントだということが知れた。CMの依頼主ということは、大手企業の経営主ということになる。
橋爪は驚いた。
大企業の社長という肩書きが似合わないほどに、彼女が余りにも若く、美しかったからだ。
結い上げた漆黒の髪に服、目元の泣き黒子が真っ赤な口紅がなんとも妖しい雰囲気を醸し出している。
髪型などは紅音に似ているが、従姉が黄色の薔薇だとしたら、この女性は真紅だ。しかもとびきり上質で大輪の。
「まあいつもネットショップでお買い上げいただいていた・・・・様は」
「ええ、私です。お恥ずかしい話ですけれども」
「そうだったんですか」
橋爪はその輪に入っていけずに、何となく離れて女性たちを見ていた。
どうやら、依頼主の彼女はこの店の常連だったらしい。一気にその場の雰囲気が柔らかくなった。
その勢いのまま女性同士にこやかに話が進み始めた。
それをぽつねんと見ていた橋爪だったが、気付いたらいつの間にやら西脇が隣に来ていた。
ぎょっとした表情に気付かなかったのか、西脇が並んだままゆっくりと顔を橋爪に向けてきた。
「紫乃さん」
「は、い!」
「失礼ですが今日この後、何かご予定は?」
「え……」
何、何、何このひと。
なんで見つめてくるの!
穏やかだがどこか強いものを含んだまなざしに、橋爪の心臓が跳ねた。
鼓動が耳の中でうるさく響く。くちびるを半開きにしたまま黙る橋爪を、西脇はなおも見つめてきた。
返事が出来ずにいた橋爪だったが、その時従姉妹と話していた彼女がふいに振り返ってきた。
「あちらは?」
「ああ、私達のいとこでして。ちょうど新作のサンプルを試してもらっていたんです」
彼女の視線は明らかに西脇の隣に居る橋爪に向いていた。
それに気付いた西脇が何か言うよりも早く、彼女が橋爪たちの方に近づいてきた。体のラインがしっかり出ている服を見に包んだ凶暴なまでの美人には、欲望を覚えるよりもまず圧倒されてしまう。
何事かと思う橋爪の前で、彼女は足を止めるとじっと覗き込んできた。
「ふーん」
夜のように漆黒な瞳で、彼女は橋爪を見つめる。
「あ、の」
西脇とはまた違った迫力に、気圧されて橋爪はそう問うことしか出来ない。
すると彼女は優雅に手指をひらめかせて橋爪の頬を撫でた。
そして、つい、と顎を軽く持ち上げる。何故か橋爪は、無礼とも言えるその仕草に抗うことが出来なかった。
しばらく───と言っても二、三秒程度のことだったかもしれない。満足したのか彼女はそのまま西脇を見上げて妖艶に笑った。
「決めたわ。この子よ」
「え?」
橋爪は彼女が何を言っているのか分からなかった。顎下に指を当てられたまま思わず隣の西脇を仰ぐと、彼女はよく通る声できっぱりと言った。
「この子をCMに使うわ。巽」
分かったわね、と女王然として告げた女性の声をどこか他人事のように聞いた次の瞬間。
「えーーーーーーーー!!!!!!」
橋爪は一人、悲鳴を上げていた。
続きません。
続きませんったら続きません。
……続かなくちゃいけないのかなあ。でもネタが(以下略)。 ←すでに弱気。
ナンパ師、西。
ゴスロリな紫乃さんの足元に膝まづく男は憎いですね。当然確信犯でしょう。
その隙に、身動きすることも忘れた橋爪の片足を西脇は少しだけ浮かせた。上から見るとまるで西脇の膝にかかとが乗っているようになっているのだ。
また彼自身も、それを何の障害とすらも思っていないように見えた。
このひとちょっと変じゃ…?
いやいやいや、男なのにこんな格好してるって分かったら私の方が変態じゃないか!!
「まあ絵になるわねえ」
「本当」
狼狽する橋爪をよそに、従姉妹ふたりはそんな呑気なこと言っている。橋爪は従姉妹を本気で呪った。ばかやろうと心の中で罵声を飛ばすことも勿論、忘れなかった。
もう嫌だ。
もういやだー!
何でこんなことになったんだ!!
「………」
本気で涙が滲みそうになった。
だからといって逃げ出す訳にも行かない。
橋爪が内心叫んでいる間にも、西脇は手を動かしていた。
西脇の所作は流れるようでいて本当に卒なく、全く違和感がなかった。
見るからに上質な格好をした男が、膝をついて橋爪の足を手に取っている。そして靴を履かせている。
彼の視線は当然ながら橋爪のつま先に向いていて、椅子に座った橋爪からは西脇がまるで目を閉じているかのように見えた。
ひどく高級な靴屋の店員か、執事とはこんな感じなのかと橋爪は見当違いのことを思った。
だがそれとは決定的に違うのが、彼の端正な面だ。まっすぐな眉、シャープな顔のライン、きりりとした唇。
やっぱりハンサムだな、とぼんやりそんなことを考えた。
そうこうする内に、履かせ終わったらしい。橋爪の片足を未だ自身のスラックスの上に載せたままだと言うのに、それを全く意に介していないのか西脇は椅子に座ったままの橋爪を見上げてきた。
「出来ました」
「あ…りがとう、ございます」
気のせいか、頬の熱が上がった気がした。
そそくさと西脇の足から靴を降ろすと、西脇が笑んだ。それどころか立ち上がる橋爪にごく自然に手を貸してくれる。
その大きな手はひどく温かかった。
そのまま頬にも睫にも手指にも熱を滲ませているような感覚を、橋爪がどきどきと全身で感じていた時。
「じゃあ西脇さん、説明をお願いします」
紅音が彼を呼んだ。はい、と答えて西脇は振り返った。そのまま離れていくかと思いきや、彼は何故か橋爪をさりげなく従姉妹の傍に連れて行く。
そのままなし崩しに三人で西脇の話を聞くことになった。店内のソファに座ると、西脇から資料が配られた。
「今回のCMは、『女性は幾つになっても薔薇』を表現することがコンセプトとなります。ご用意いたしました資料によりますと、弊社のリサーチ結果では…」
西脇の声が夜の店内に静かに沈む。
…なんで私ここにいるんだろう。
それよりピン打ちとやらはどうなったんだと隣の紅音をちらりと見るも、何を誤解したのかにっこりと笑い返された。
違う違う!と橋爪が訴えたくなったのも無理はないだろう。
「女は何歳になっても薔薇、かぁ」
しかしちょうどその時、翠が資料を見ながらそう呟いた。すると姉も大きく頷く。
「ある意味、紫乃には当てはまらないわね」
「そうよね。だって紫乃はオト」
「わーーーーーーーっ!!!」
橋爪が立ち上がって大声を上げる。わたわたと手を動かして、爆弾発言を落とそうとした翠の両肩に掌を乗せると、「なあにうるさいわねぇ」と姉のく紅音が呆れたように言った。
「あ」
はたと気付いて三人と対面していた西脇を振り返ると彼は目を丸くしていた。
ソファの端に座っていた橋爪は、真ん中の紅音を通り越して反対側の翠に身を倒していたのだ。まるで西脇の眼前で女性二人に覆いかぶさっているようなかたちに、一気に羞恥がこみ上げる。
「すみません…お話の途中に」
しゅんと項垂れて自らの位置に戻ると、「いえ」と柔らかないらえが返った。怒ってはいないようだが、呆れているか笑っているのかもしれない。
そう思うと益々身の置き所がなくなった。
橋爪が自己嫌悪に似た思いに囚われている中でも西脇の説明は続いた。凛とした声に整然とした話の内容は、聞く者を引き込む力を持っていた。
それは従姉妹たちも例外ではなかったらしい。どうする?とお互いを窺いあっているのが分かる。
それでも決定には至らず、説明がちょうと終わりかけたその時だった。
店の扉が開いた。
「こんばんは、こちらに西脇という者がお邪魔していると…」
新たな声がした。
橋爪が顔を上げると、ひとりの女性が店の中に入ってこようとしていた。彼女の名前を呼んだ西脇と、新たな客を迎える従姉妹たちに橋爪もつられて立ち上がる。
「突然申し訳ありません、私は───」
名刺を出した彼女は西脇や従姉よりも少し年上に見えた。
しかし西脇の紹介で、その彼女こそが今回のクライアントだということが知れた。CMの依頼主ということは、大手企業の経営主ということになる。
橋爪は驚いた。
大企業の社長という肩書きが似合わないほどに、彼女が余りにも若く、美しかったからだ。
結い上げた漆黒の髪に服、目元の泣き黒子が真っ赤な口紅がなんとも妖しい雰囲気を醸し出している。
髪型などは紅音に似ているが、従姉が黄色の薔薇だとしたら、この女性は真紅だ。しかもとびきり上質で大輪の。
「まあいつもネットショップでお買い上げいただいていた・・・・様は」
「ええ、私です。お恥ずかしい話ですけれども」
「そうだったんですか」
橋爪はその輪に入っていけずに、何となく離れて女性たちを見ていた。
どうやら、依頼主の彼女はこの店の常連だったらしい。一気にその場の雰囲気が柔らかくなった。
その勢いのまま女性同士にこやかに話が進み始めた。
それをぽつねんと見ていた橋爪だったが、気付いたらいつの間にやら西脇が隣に来ていた。
ぎょっとした表情に気付かなかったのか、西脇が並んだままゆっくりと顔を橋爪に向けてきた。
「紫乃さん」
「は、い!」
「失礼ですが今日この後、何かご予定は?」
「え……」
何、何、何このひと。
なんで見つめてくるの!
穏やかだがどこか強いものを含んだまなざしに、橋爪の心臓が跳ねた。
鼓動が耳の中でうるさく響く。くちびるを半開きにしたまま黙る橋爪を、西脇はなおも見つめてきた。
返事が出来ずにいた橋爪だったが、その時従姉妹と話していた彼女がふいに振り返ってきた。
「あちらは?」
「ああ、私達のいとこでして。ちょうど新作のサンプルを試してもらっていたんです」
彼女の視線は明らかに西脇の隣に居る橋爪に向いていた。
それに気付いた西脇が何か言うよりも早く、彼女が橋爪たちの方に近づいてきた。体のラインがしっかり出ている服を見に包んだ凶暴なまでの美人には、欲望を覚えるよりもまず圧倒されてしまう。
何事かと思う橋爪の前で、彼女は足を止めるとじっと覗き込んできた。
「ふーん」
夜のように漆黒な瞳で、彼女は橋爪を見つめる。
「あ、の」
西脇とはまた違った迫力に、気圧されて橋爪はそう問うことしか出来ない。
すると彼女は優雅に手指をひらめかせて橋爪の頬を撫でた。
そして、つい、と顎を軽く持ち上げる。何故か橋爪は、無礼とも言えるその仕草に抗うことが出来なかった。
しばらく───と言っても二、三秒程度のことだったかもしれない。満足したのか彼女はそのまま西脇を見上げて妖艶に笑った。
「決めたわ。この子よ」
「え?」
橋爪は彼女が何を言っているのか分からなかった。顎下に指を当てられたまま思わず隣の西脇を仰ぐと、彼女はよく通る声できっぱりと言った。
「この子をCMに使うわ。巽」
分かったわね、と女王然として告げた女性の声をどこか他人事のように聞いた次の瞬間。
「えーーーーーーーー!!!!!!」
橋爪は一人、悲鳴を上げていた。
続きません。
続きませんったら続きません。
……続かなくちゃいけないのかなあ。でもネタが(以下略)。 ←すでに弱気。
ナンパ師、西。
ゴスロリな紫乃さんの足元に膝まづく男は憎いですね。当然確信犯でしょう。
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プロフィール
HN:
Kaeko
性別:
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自己紹介:
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西橋萌えを語ることが多いかも。
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